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魔法少女リリカルなのはsts masked rider kabuto クロス元:仮面ライダーカブト 最終更新:08/03/08 第一話 第二話 第三話 TOPページへ このページの先頭へ
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――その男は暗闇の中で覚醒した。 随分と長く意識を失っていた気がする。 或いはたった今、この世に生れ落ちたかのような。 そう言った認識を得た直後、急速に世界が広がった。 状況を把握できた、と言い換えても良いだろう。 彼は自分が金属製のベッドに横たわっている事に気付いた。 否、ベッドではあるまい。これは――手術台だ。 「やあ、目が覚めたか」 不意にガコンと音がして、彼を灯りが照らし出した。 周囲の様子が露になる――が、彼にとっては然したる意味も無い。 たとえ真の暗闇の中であろうと、彼の"眼"は見通す事ができるからだ。 手術室。手術台。何の事は無い。見慣れた光景だ。 その入り口にたたずむ白衣の男だけが、普段とは違った存在だった。 「――"博士"ではないのか。誰だ、貴様は」 「ジェイル・スカリエッティ。或いはドクターとも呼ばれるがね」 その男、およそまともな人物でない事は一目でわかった。 眼が違うのだ。爛々と輝く金色の瞳は、それだけで男の異様さを物語る。 肉体がどうかなど知らない。その精神こそが異常。 「……何故、俺はココにいる?」 「的確な質問だ。"彼ら"はキミを使ってある作戦を行い――そして失敗した。 そして大きな損害を受けたキミを廃棄する代わりに、我々に売ったのさ」 「つまり俺は……払い下げられたのか」 彼は虚ろな声で言った。ある種の虚無感が其処にある。 「ガラクタとして、残骸として、スクラップとして」 「そう悲観する必要は無いぞ。単に彼らではキミの肉体が再生できなかった、というだけの事だ」 言われてみれば、確かにそうだ。 彼と同等の損傷を受けた仲間は、皆間違いなく死亡していたのに対し、 手術台の上に横たわっている彼の身体は、全くと言って良いほど無傷。 見慣れた黒色の戦闘服も、胸部装甲も、傷一つついていない。 となれば、頭部も同様なのだろう。 ぎこちなく腕を伸ばして顔を撫でると、硬質の感触があった。 間違いない。自分は完全に回復している。 「俺を買い取ったと言ったな。そして、修理まで行った。――――だが、何の為だ?」 「私の"上司"には色々あるようだがね。私に限って言えば、夢の為だ」 「……夢、だと?」 頷き、白衣の男は大きく両手を広げた。 まるで役者でもあるかのような大仰な仕草。 「生まれた時から持っていた夢。 刷り込まれたものかもしれないが、これは私の願いだ。 私が望む世界。 私の世界。 自由な世界。 それを襲い掛かって、奪い取る。 ――それが、私の夢だ」 世界を奪い取る。 その言葉が、電撃のように彼の脳裏を駆け抜けた。 たとえ自分が今生まれたばかりであるとしても、 たった今受けた衝撃こそが、彼にとっては何よりも大切だった。 「――――それは」 ようやく絞りだせた声は、随分と震えていた。 恐ろしいのでもない。怯えているのでもない。 それは極めて明確な一つの感情によるものだ。 彼は喜んでいた。 歓喜していた。 世界を奪うという、その『夢』に。 「?」 「世界征服、という事か」 ――これが、全ての発端だった。 魔法少女リリカルなのはNumberS 『仮面の男』 「スローターアームッ!!」 二本の足で地に立つ男目掛けて、空より飛来する刃が二つ。 戦闘機人No7。セッテの固有技能および固有装備、ブーメランブレード。 空中戦闘に特化した彼女によって、意のままに操作されるその兵器は、 古代ベルカ騎士の一撃に匹敵するという威力、速度を秘めた代物だ。 当然、まともに喰らえば只では済まず、また回避する事も難しい。 だが――……それが届くよりも先に、大地が踏み砕かれた。 ――跳躍。 一瞬にして15m。恐るべき脚力である。 回避したのみならず、その男は空中のセッテ。その間近にまで迫る。 「――ッ!」 たまらず彼女は急制動をかけ、距離を取った。無論、その間にも戦闘行動は途絶えることが無い。 投擲したブーメランブレードを呼び戻しながら、両手に更に二振りの刃を生み出す。 宙に浮いてしまえば、何の装備も有さない存在は動きようが無い。狙うならば今だ。 両手に武器を握ったセッテは、背後から男に迫る刃に加え、その二刀を投擲。 前後左右からの回避不能な同時攻撃によって、一挙に畳み掛ける。 悪くは無い。 決して、悪くは無い。 だが、それはおよそ一般的な場合にのみ言える戦術でしかない。 この男は、そのようなマニュアルの範疇に入る筈が無いのだった。 しっかりとその脚が"宙を舞うブーメラン"を踏みしめる。 「反転―――……」 どん、と鈍い音。 男が更に跳躍した事を理解した瞬間には、その一撃がセッテへと放たれていた。 「――キィイィィックッ!!」 この男を一瞬にして15mの高みにまで至らせた脚力。 其処から全力を持ってして放たれるキックの威力は、およそ10トンになるだろう。 そうなれば無論、まともに喰らえば戦闘不能となる事は間違いない。 まさに一撃必殺。 空中戦特化という事もあって、比較的防備の少ないセッテでは耐えうる事は不可能だろう。 トンと脚が触れた瞬間に、模擬戦終了を告げるブザーが鳴り響いた。 「どうですか、001」 「戦術は悪くない。が、思考外の出来事にとっさに反応できないようではな」 地に降り立った彼女に対し、同様に着地した男――001は、そう答えた。 ナンバーズは異常な存在だ。だが、それを上回るほどに異常で不気味なのが、この男だった。 身に纏っているのは黒色の戦闘服。これはさして問題は無い。 基本的にはナンバーズの其れと、男女の差こそあれど大きな違いは無いからだ。 しいて言うならば肘や膝、肩などの要所にプロテクター、そして胸部には頑丈な装甲が備わっている点くらいか。 首にマフラーを巻いているのも、気にする程の事ではない。 チンクの眼帯、ディエチのリボンや、ディードのカチューシャ、或いは他ならぬセッテのヘッドギアなど、 ナンバーズと言えども戦闘行動の支障になら無い範疇で、多少のファッションは許されている。 問題は、頭部だ。 ――仮面。 ヘルメットと呼ぶことはどう考えても不可能だった。 何故なら其処には『顔』が存在していたのだから。 緑色の目を持つ、無機質な『顔』 であるならばそれは、正しく『仮面』だった。 そんな存在がどうして正常だと言えようか。 まだしも肉体が生身であったならば、そう呼べたかもしれない。 だがセッテの視界――解析システムは、男が生身の人間では無い事を伝えている。 脳の一部を含む肉体の大半が機械に置き換わっている彼こそは、まさしく最初の戦闘機人。 およそ全ての戦闘機人の原型となったが故に"001"と呼ばれている男。 ドクタースカリエッティの旧友であり、同時にナンバーズの教官でもある男。 それが、彼だった。 空戦型であるセッテの模擬戦相手としては役者不足とも思えたが、 しかし先程の跳躍を見ればわかる通り、この男は十分以上の空戦能力を有している。 このように何の問題もなく、彼女に訓練を施すことが出来るのだ。 少なくともその点については、セッテも文句は無い。 「お前の姉からも言われなかったか?」 「はい。トーレから"機械過ぎる"と」 的確な表現だな、と呟いて001は笑った。 「我々は改造人間――もとい、戦闘機人だ。兵器であるが、同時に兵士でもある」 「001。言っている意味がわかりかねます」 「つまり、人間なんだよ、俺たちは。ここに詰まっているのは蛋白質の塊か?」 そう言ってコツコツと001はヘルメットを叩いた。 緑色の複眼が煌き、セッテは奇妙な居心地の悪さを覚える。 文句があるとすれば、これだ。 セッテは彼が苦手だった。 こんな感情は、完璧な兵器であろうとする彼女にとって有り得ない事なのだが、 とにかく彼女にとって001は苦手と判断せざるをえない対象だった。 理由はと問われても、セッテには判断できない。 結局、プログラムに発生したバグ、或いは欠陥と結論せざるを得なかった。 どちらにせよ留意すべき事態であるのは間違いあるまい。 こうして幾度か1号に戦闘訓練を受けるのも、そのバグを克服するのが目的なのだが。 どうにも、この複眼に見つめられるのだけは、慣れない。 思考の中へと陥っていたセッテを現実に引き戻したのは、1号の次なる言葉だった。 「ただの兵器では、奴らに勝てん」 「――……奴ら?」 「圧倒的な性能差。絶望的に不利な戦況。 そういった物を、いとも簡単に覆してのける存在だ」 「……わかりかねます。 性能差や戦況の悪化。別々に発生したのでしたら覆す事も可能かと思いますが、 両者が同時に発生したのであれば、それを打開するのは不可能かと」 最もな意見である。 およそ魔法に関して言えば持って生まれた素質がほぼ全てであるし、 彼女達の持つIS、先天固有技能なども、その典型的な例だと言える。 だが、それに対して001は皮肉げな呟きでもって答えた。 「それが、可能なんだよ。――――人間という奴には」 ――人間には、それが可能。 不可解な理論に彼女が頭を悩ませていると、001は笑いながら手を振った。 「まあ良い。いずれお前も逢うだろうし、今考えても仕方ない事だ。 それより、集団洗浄の時間じゃないのか? お前も行って来たらどうだ」 「いえ、可能ならばもう一戦お願いしたいのですが」 「悪いが、俺はドクターに逢いに行かなければならない。 良いから行って来い。訓練、訓練、では機械そのものだ」 「はい、ではそのように」 *********************************** ジェイル・スカリエッティの本拠地には、大規模な集団洗浄場が存在する。 より一般的な表現をするならば、大浴場と言った所か。 12人のナンバーズ姉妹全員で入浴してもまだ余裕のある規模の浴場では、 今日も今日とて幾人かのメンバーが、集団洗浄を行っていた。 話題と言えばまあ、いつも通りだ。 ノーヴェやウェンディによるバカ騒ぎから始まり、 オットーの性別について、或いはクアットロについての軽口。 この場にはいないドゥーエに対してのあれこれやらも加わり、二転三転した後、 研究施設における唯一の男性型戦闘機人――つまり001の事になる。 「あー……ダメだ。やっぱアイツは好きになれない」 「そうッスねー。あのヘルメット、髑髏みたいで、ちょっと怖いッス」 「そこじゃねぇよ。何考えてるかわかんねぇところが苦手なんだ」 浴槽にしっかり肩まで使ったノーヴェと、のんびり浮かんでいるウェンディの会話に、 さもありなんと他のナンバーズ一同、揃って頷く。 性別不明なオットー以上に謎めいているのが、あの仮面の男、001だからだ。 戦闘機人の試作品――タイプゼロよりも前に存在していたとの触れ込みであり、 ドクターとの付き合いも長く、ナンバーズ達も生まれた当初から関わっている。 更に言えばセッテならずとも訓練を指導してもらった経験は全員にある。 そしてその戦闘能力は、魔術的要素が一切無いとはいえ、特筆すべきだ。 だが――果たして"姉妹"の中で、誰か一人でも彼を好ましいと感じる者はいるだろうか? 嫌っている者はいないだろう。だが、好きにはなれなかった。 「僕も彼の事は好きになれない。――何故、顔を隠してるんだ」 「あたしも。001さんの顔、見たこと無いもの。ディードは?」 「特段、好ましいとも思ってはいませんが」 「でもさー。私、前にドクターから聞いたんだけど。 私たちの持ってるIS――先天固有技能ってあるじゃない?」 「ああ、あたしのエアライナーとか、セインのディープダイバーとかだろ?」 「お姉ちゃんのこと呼び捨てにすんな。 ともかく、戦闘機人にそれぞれ固有能力持たせようって、001の発案だって聞いたよ?」 「うわ、マジかよそれ」 「あ、それとあたしはあの仮面には爆弾が装備されてるって聞いたッス! 外すと爆発するって」 「……誰から聞いた、それ」 「クア姉から」 「そりゃ嘘だよ、ウェンディ」 満場一致でそれは嘘だ、という結論に達する姉妹たち。 しばらくしてセッテが集団洗浄に参加すると、すかさず質問攻めが始まる。 加えてウェンディによる胸部接触も行われ、解放されたディードが胸を撫で下ろす一面もあった。 つまり何が言いたいのかと言えば、単純な一言である。 ナンバーズは今日も平和だった。 ************************************** 「――――終わったぞ」 研究室。 不意に聞えた静かな声に、001の意識は緩やかに覚醒した。 またしても手術台の上。だが、特に慌てることも無い。 日に一度スカリエッティの検査を受けるのが、彼の日課だからだ。 「どんな按配だ?」 「キミのお陰で彼女達の製作も、訓練も、実に滞りなく進行している。 いや、むしろ当初の予定をはるかに上回る出来栄えだ。 だからこそ、私も努力はしているのだが――……」 「難しい、か」 「……ああ、すまないね」 ドクター・スカリエッティにしては珍しく、沈鬱そうな表情を見せた。 だが、それに対して001は特に気にした様子も無い。 元より仕方の無い話なのだ。 「拒絶反応――リジェクション、か。 最初から機械との適合を考えて生み出されたナンバーズならばともかく……。 元々がただの人間だったキミでは、機械との融合は負担が大きすぎるのだよ」 「理解している。ドクターが努力をしてくれたことも。不満は無い」 マフラーを結び直しながら001は言う。 言葉に他意はなく、まったくの本心であった。 結局のところ薬で無理やり抑え込むだけであっても、大したものだ。 そういった事すら以前は不可能だったのだから。 「こんなにも人間らしい待遇を受けたのは、久しぶりなんだ。何せ――」 その声は何処か笑っていた。 「改造人間という名の『兵器』だからな、俺は」 「戦闘機人という名の『兵士』なのだよ、今は」 ドクターの声は、何処か疲れていた。 「私にとって、生命というのは素晴らしいものだ。 その可能性を探りたいし、尊い存在だとも思う。 人は『生命を弄ぶ』などとも言うがね。だが、しかし君は――……」 「構わない。判りきっている事だ」 頷きを一つ返し、手術台の上に腰を下ろす。 伸ばした右手が手繰り寄せるのは、スカリエッティの用意した作戦計画書だった。 複製が困難であるという意味において、紙と言う情報媒体は比較的優秀なのだ。 慣れた手付きでページを繰る001の姿に、スカリエッティは苦笑を浮かべる。 「相変わらず君は、寝ても覚めても征服、征服、だな」 「当然だろう。この"組織"で戦闘経験者は俺だけだ。それに――」 「それに?」 「これは俺の『夢』だからな」 これにはスカリエッティも笑うしかない。 一番の同士。一番の友人。本当に頼りになるが、頼り切ってしまいたいわけじゃない。 と、不意に001の手が止まる。 「……スカリエッティ。ひとつ聞いても良いか?」 「ああ。一つといわず、幾つでも」 「この――タイプ・ゼロファースト、セカンドという奴だ」 001が指差した先には、カーボン複写された設計図が添付されていた。 スカリエッティの計画書において「可能であれば捕獲」と記されたそれは、 図案の人物が子供であるとはいえ、その内部構造は間違いなく改造人間――戦闘機人である。 「ああ、文字通りの存在だよ。戦闘機人のゼロ番機――もっとも、君よりは後発だが。 『誰か』が作り、奪取され、現在は管理局に所属している。私の知的好奇心から、調べてみたくてね」 「――……特徴は?」 「ファーストがテクニックを。セカンドはパワーを重要視している――らしい」 「……………」 「興味があるのかね?」 いや、と首を左右に振った001は手術台から降り、資料を手にしたまま歩き出す。 「技と、力……か」 退室する間際、ひどく懐かしげに彼が呟いた言葉の意味は、スカリエッティにはわからなかったが。 目次へ 次へ
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第一話 サイファ- こちらガルム1、帰還した。 これより着陸体制に入る。 こちら、管制塔。了解、ガルム1! よくやってくれた! 通信の向こうから歓声が聞こえる。 その歓声は国境なき世界を潰し、相棒(PJ)を落とされ、かつての「相棒」を落とした血に濡れた「英雄」を称えてでもいるのだろうか。 「…戦争は終わった。じゃあ、「俺達」傭兵はどうしたら良い?」 俺はそう呟いた。 世界には争いが絶えない。きっと、なんだかんだいって「傭兵」と言う戦争屋と嘲れる物がなくなる事は無いのだろう。 相棒、俺はお前を止めて良かったのか? お前の言う通り国境をなくし、全てをzeroに戻し、次の世代に託した方が良かったのか? …答えは出る事は無く、基地は近づく。 着陸する。 イーグルが低空飛行に入る。 静電気のような物が突然走り、目眩がする。 バチッ 一瞬、何もかもが真っ白になり何も見えなくなった。 接地する。 「今一瞬目眩がしたな…」 出撃は長時間だった。 パイロットにも機体(イーグル)にも損害は大きかった。 きっと目眩はそのせいだろう。 明るく差し込む光が、そう… 「光…!?」 基地は確か、雪だったはず… しかし、イーグルのキャノピーから覗ける空の光景は晴れ晴れとした青空だった。 「…しかも明らかに基地じゃねえよココ」 管制塔、格納庫、対空火器、先に帰って来てるはずの攻撃隊、そんなものは一つも見あたらなかった。 イーグルが止まる。 「見た感じは民間施設…か?」 銃の安全装置を解除し、周りを見渡す。 どうやら駐車場に着陸したらしい。 「通信は…ダメか、GPSもダメだな。」 通信は全チャンネル応答無し。 国際救難チャンネルもダメ GPSはなんかそもそも衛星が見つからないとかなんとか これじゃあエンジンを再始動させたってどこに帰ればいいのかわからない。 「サバイバルキットは…と」 どうも何かヤバい感じがする。 そう思ってシート下に仕込んであるサバイバルキットを… 「…動かないで」 取り出せなかった。 キャノピー越しとは言え……槍みたいなもん?を突きつけられた。 …やれやれ、近づいて来てるのに気づかないたあ、我ながら不用心だ。空戦ならもう死んでるな。 自分に呆れながら、逆らえない状況で指示があったのでキャノピーを空ける。 「女の子…か。物騒な世の中だねえ。」 俺に槍を突きつけていたのは茶色の髪の毛の女の子だった。 しかし、最近の槍はこんなもんか?変なデザインだ。 …まあ、なんであれ。槍と安全装置は解除してるが弾倉を入れ忘れてる銃じゃあ勝負というかお話しにならないわけで。 「…はい、降伏。 「国境なき世界」かベルカか知らないが捕虜の扱いは条約に従ってくれよ」 今までの自分のやって来た事を考えると戯言だな。自分で苦笑しながら銃を少女に渡す。 「…で?ここはベルカなわけか?それともアヴァロンダムか?」 「あ、あの…仰ってるわけが良く…ベルカはともかくアヴァロンダムや「国境なき世界」って何ですか?」 「はい?」 「俺は"世界"から跳ばされてここにきた…と…?」 ある意味、普通の驚き方に私はほっとしていた。 "跳ばされる"事自体はあまり珍しくは無い。 ただ、跳ばされてきた来た人は大抵、自分が跳ばされてきたを否定し、話すら聞こうとしない。 それを考えれば、目の前の青年が話をキチンと聞いてくれるのは、珍しくもありがたい事である。 実際、青年は小言で「なるほど…だから急に天気が…」 とか言っている 「疑わ…ないんですか? 大抵の人は、「謀略」とか「夢」とか言いますよ?」 私は不思議に思って、彼に問うてみた。 「へ?いや自分の目で見て、考えて、実際その"跳ばされてしまった"と言う話を否定する材料が無い、それに…」 「それに?」 「虚実や謀略で無いことくらいはその目を見ればわかる。」 高町と名乗った少女の話は、確かに衝撃的だった。 俺は何らかの原因で世界から跳ばされてこの世界にたどり着いたらしい。 最初はベルカの謀略…を疑わなかったわけではない。 しかし、冷静に考えていくらベルカが有り得ない技術力を保有していた所でこんな手の込んだ事は出来ない。 それに、尋問官である高町の目は嘘を言っている人間の物では無い。と感じたのだ。 (それを言ったら、クスクス笑われたが) 「なのは、交代しよう」 突然ドアが開き、また今度は大人と言っていい年齢な感じの女が入ってきた。 「シグナムさん!」 「…ここは任せろ。新人達の所へ行ってやれ。」 シグナムと呼ばれた女にそう言われた高町は、シグナムに礼を言うと、俺の尋問内容を書いた紙を渡し部屋を出ていった。 シグナムはその紙を見ながら、俺の向かい側に座る。 「…なるほど、確かに珍しいな。 ここまで今の自分の状況を理解するのは。 」 そうシグナムは呟いていた。 「私はこれから貴君の個人情報について、聞こうと思う。 個人情報だからな。答えたくないことには答えなくてもいい。」 シグナムは紙を捲りながら、そう言うと「さて、まず名前を聞こうか?」 「ウスティオ空軍第6航空団第66飛行隊、ガルム隊一番機"ガルム1"だ。 いや、地上なら "サイファー"でいい」 世界は違えど、思いは変わらず、何が起こるかわからん新世界 とりあえず、魔法少女リリカルなのは nextgenerations 始まります。
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高町なのは いつまでも教導官魂を忘れないエース・オブ・エース 都筑真紀 25歳になりましたが相変わらずななのはさんです。なにげに本編の笑顔担当だったりも。 第二部は日常系描写が増えるので、戦闘以外での出番が増えるかも? 緋賀ゆかり 25歳になったなのはさんです! 前シリーズ『魔法少女リリカルなのはStrikerS』時よりも大人の雰囲気を出したいと思って描いています。 スバル・ナカジマ トーマを優しく見守る姉貴分の防災士長 都筑真紀 トーマが大変なことになっていたりティアナが別現場だったりで4巻ではいろいろ心配と苦労の連続な防災士長。 第二部ではわりとあははと笑ってられる……かな? 緋賀ゆかり ドラマCD『StrikerS サウンドステージX』の奥田(泰弘)さんのスバルの絵から数年、 時を重ねたイメージで髪型を調整しています。 フェイト・T・ハラウオン なのはとのタッグ健在 強く美しき執務官 都筑真紀 相変わらずなのはさんのピンチにはちゃんと駆けつけます、フェイトさん25歳。 BJ時には髪型も変わって、すっかり大人の女性です。 緋賀ゆかり フェイトさんも25歳ということで落ち着いた雰囲気を出すために髪型がひとつ結びになっています。 八神はやて いまだ真意は謎に包まれた特務六課司令 都筑真紀 がんばるちびたぬ部隊長、25歳ですが身長はあまり伸びてません。 気苦労と不運続きな部隊長ですが、明るいみたい目指して頑張って欲しいところです。 緋賀ゆかり 前髪に分け目ができて左耳に髪の毛をかけて後ろ髪を流しています。 実は、『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の時より少し痩せた、という設定になっているようです。
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人影にいち早く気がついたガロードはティファを連れて素早く岩陰へと隠れた。 岩に背を預けたまま顔を覗かせ、背後の様子を窺う。 彼の視線の先には四人の魔導師がいた。 内、二人は金髪の若い男。 もう二人は女性で、片方はどう見ても子供だ。 そのことに一瞬戸惑いを感じたがガロードだが、時空管理局は才能と本人の意志さえあれば入局出来ることを思い出す。 恐らくあの子供もそういう者の一人なのだろうと結論付け、再び様子見を始めた。 幸いにもまだ誰にも見つかってはいないようで、ガロード達を探して辺りを見回している。 更に後方にはガロードが潜入した白い船が停泊しており、それを見た彼には魔導師らの目的が容易に想像出来た。 (あいつら……ティファを連れ戻しに来たな) 一難去ってまた一難。 ガロードは緊張を解いた体を再度引き締め、GXを持つ手に力を入れる。 手と額にはうっすらと冷や汗が滲んでいた。 一方、ティファを追って来た四人の魔導師達――正確には二人の魔導師と二人の騎士―― 大破したガジェットを囲み、燦々たる有り様を目の前にしていた。 「I型とは言え、AMFを持ったガジェットをここまで見事に破壊するとはな」 その内の一人、ヴォルケンリッターが将・シグナムはその場にしゃがみ込み、ガジェットの破損具合を見極めていた。 ガジェットの状況や傷口から、破壊した人物の情報を少しでも得るためだ。 先程まで激しく燃えていたであろう炎も今は納まり、今は黒い煙だけが立ち上っている。 しかし破損状況は思ったよりも酷く、ガジェットの残骸から得られる情報は無いに等しかった。 唯一解ったことと言えば、鋭利な刃物で両断されたということ位。 ある意味予想通りの結果に溜め息をつき、シグナムは立ち上がった。 「こりゃ、久々に骨のある相手と戦えそうだぜ!」 その横で、白と赤が目立つバリアジャケットを着た魔導師が己の闘志を燃え上がらせていた。 彼の名はウィッツ・スー。 ジャミルに傭兵として雇われおり、二丁のライフル銃型ストレージデバイス『ガンダムエアマスター』を操るフリーの魔導師である。 根が熱い性格であるウィッツは強い相手と戦えるとあり、任務を忘れて気分を高揚させていた。 そんなテンションの上がるウィッツを、少し離れた所から冷めた目で見ている魔導師がまた一人。 「ウィッツの奴、張り切っちゃってまぁ。やることだけちゃっちゃとやって、ギャラ貰うのが大人じゃないのかねぇ?」 濃い緑のバリアジャケットを身に纏い、腕、肩、足など体中を兵器型のデバイスで武装しているのは、ウィッツと同じくフリーランスで魔導師をやっているロアビィ・ロイ。 体中に装備された様々な兵器型デバイスの管制・運用を行っている高処理性能ストレージデバイス『ガンダムレオパルド』の所有者で、彼もまたジャミルに腕を買われ雇われていた。 ウィッツとは対照的にクールな性格のロアビィは敵の魔導師に大して興味がなく、一見するとやる気がないようにも見える。 「お前! 口動かしてないでさっさと探せよな!」 「はいはい、分かってるって」 その姿勢が癪に障ったのか、すぐ側でティファの捜索をしていたヴィータはロアビィに向かって怒声を浴びせた。 愛機グラーフアイゼンを振りかざして懸命に威嚇するも、残念な事にあまり怖くない。 ロアビィはヴィータを軽く受け流し、ティファの捜索を再開した。 四人はゆっくりと、ゆっくりと、ガロード達へ着実に近づいて行く…… 第二話「あなたに、力を…」 (来る……っ!) スラッシュフォームに変形させたGXを握り、ガロードはシグナム達の動きを伺っていた。 少しずつ近づいてくると同時に緊張も高まってくる。 相手は四人、こちらは実質一人。 圧倒的に不利な状況の中、現状を脱出できる最良の策を必死になって考える。 (ここから逃げても見通しがいいから見つかっちまう。見つかっても逃げきれる方法! なんか、なんかないか!?) 考えれば考えるほど思考は泥沼化し、一向に良い案など浮かばない。 更に刻刻と近づく足音がガロードから落ち着きを奪っていく。 すぐそこまで迫る複数の足音。 頭を抱えて悶え苦しむガロードだったが、ふと、一つの名案が迷走する頭に閃いた。 ……この場合、迷案と言った方が正しいのかもしれないが。 兎にも角にも、もう一刻の猶予も残されていない。 ガロードはこの状況を脱するべく立ち上がった。 横ではティファが心無しか不安げな表情を投げ掛けていたが、安心させる為に笑顔で答える。 シグナム達がいるであろう方を向き、ガロードは隠れ蓑にしていた岩に飛び乗った。 「やーいっ!! お前達!!」 開口一番、大声を張り上げその場にいる全員の視線を集めた。 見た目からして腕利きの魔導師三人(ヴィータは数に入れていない)を前にしても、ガロードの声色は全く変わらない。 一人でアフターウォーを生き抜いてきた彼にとって、こんな状況はさして珍しくないのだろう。 大きな賭は慣れっこなのだ。 「出やがった、なぁっ!?」 「が、ガキンチョだぁ!?」 対するウィッツ達は未知の魔導師の登場に驚愕し、同時に落胆した。 ガジェットを撃破した魔導師がこんな子供という事実に。 特にシグナムとウィッツは久々に実戦で魔導師と手合わせ出来ると踏んでいただけに、落胆の具合も半端ではなかった。 ロアビィとヴィータに関しては呆れ果てて物も言えない。 目の前がそんな状態になっているとは露知らず、ガロードは一世一代の賭け始めた。 「もし攻撃したら恐ろしい事になるぞ! いいか、よーく聞けよ! このデバイスにはなぁ、おっそろしい魔法が記録されてるんだぞ!!」 「ほぉ……それは興味深いな」 かかった! シグナムの呟きを耳にしたとき、ガロードはそう確信したという。 残念な事に、その言葉に含まれていた大きな皮肉の意を全く理解せずに。 妙な自信をつけたガロードは更に続ける。 「だから! それを使われたくなかったら大人しく……」 『Rifle bullet』 『Grenade launcher』 「ん?」 不意に、デバイスの音声が響いた。 ガロードが音声の発生源を見ると、ウィッツとロアビィが自分に向けてデバイスの銃口を見せている事に気がつく。 銃口にはそれぞれ魔法陣が展開されていた。 ……まさか。 冷や汗が頬を伝った瞬間、光の銃弾と高密度魔力弾がガロードを襲った。 「おわああぁっ!? ととっ!?」 急に仰け反った為バランスを崩し、そのまま岩の横へと倒れ込むガロード。 それが幸いし、ウィッツのライフルバレット、ロアビィの放ったグレネードランチャーを奇跡的に避けることが出来た。 が、代わりに左半身が硬い地面に直撃。 少し高さがあった事も手伝い、鈍痛がガロードの体を駆け巡る。 「馬鹿か! んな見え透いた嘘が通じるワケねぇだろ!!」 「嘘はイケないなぁ、嘘は!」 くだらない嘘を聞かされ怒りが増し、今にもガロードを撃ち殺さん勢いで怒鳴るウィッツ。 続くロアビィも言葉こそは軽いが、強い呆れが聞いて取れる。 「く、くそぅ……なんでバレたんだ?」 バレていないとでも思ったのか。 ウィッツ達は痛む脇腹をさすりながら立ち上がるガロードに冷めた視線を向けた。 ……人を騙すにはそれなりの材料とシチュエーションが必要になる。 今回ガロードには、相手に秘密兵器を持っていると思い込ませるだけ材料の不足していた。 更に騙す側が冷静さを忘れてしまっていたのだから、この結果は至極当然と言えるだろう。 一世一代の賭け、早くも終了である。 それでもガロードは立ち上がり、GXの刃先をウィッツ達に向けた。 飽くまでも対抗する気らしい。 「ったく……さっさと伸して船に連れ帰っちまおうぜ。ガキの相手なんかしてられっか」 「待てよ」 「あぁ?」 痺れを切らしたウィッツがエアマスターの銃口を再びガロードに向けようとした時、その行動を止める人物が現れた。 邪魔をされたウィッツは露骨に嫌そうな顔で止めさせた人物を睨み付ける。 意外にもそれは、普段血の気の多いヴィータであった。 ウィッツの睨みにも全く動じることなく、寧ろ睨み返している。 「相手はまだ子供だ。んな目くじら立てなくても、話し合いでどうにかなんだろ。ここはあたしが説得してやる」 エアマスターの銃口を無理やり下ろさせると、ヴィータはウィッツを押し退け一歩前へ出た。 ウィッツは不満に顔を歪めていたが、言い争うのも面倒だと早々に諦める。 因みに、「お前も子供だろ」と思ったのはここだけの秘密だ。 「ヴィータにしては珍しいな。高町なのはに触発されたか?」 「るせぇ」 シグナムの嫌味を流しつつ、ヴィータはグラーフアイゼンを待機フォルムへと変形させた。 実際、ヴィータは『高町なのはの一件』以来確実に大人の対応が出来るようになってきている。 『話し合いの場には武器を持ち込まない』という10年前の自分の言葉を律儀に守っているのも、その影響なのだろう。 発端はともかく、シグナムはヴィータがこの数年で変わってきた事を、将として内心嬉しく思っていた。 「おい、お前」 「な、なんだよ!?」 ガロードはGXの魔力刃を見せつけ、急に声をかけてきたヴィータを威嚇する。 だが彼女は全く気にした様子もなく、涼しい顔で言葉を続けた。 「誘拐、並びにデバイスの窃盗。これだけでも結構な罪だ。普通だったら即逮捕、だな。だけどな、おまえが浚った少女をこっちに渡せば、お前にはまだ弁護の余地ってやつがある。武装を解除して素直に」 投降しろ、とヴィータは言おうとしていた。 ――この後数分間押し問答を繰り返し、最後には自首させる。 どうしても話し合いに応じない場合にのみ、なのは流で『お話する』―― それがヴィータの考えだった。 しかし、それはガロードの爆弾とも言える発言の前に脆くも崩れ去ったのだった。 「うるせえっ! 『チビ』の癖に難しい事ゴチャゴチャ言いやがって! 『ガキ』はお家に帰ってお人形遊びでもしてろよっ!!」 ブツンッ。 ガロードが言い放った刹那。 その場に、張り詰めた糸が、千切れたような音が響いた。 直後、先程まで涼しい顔をしていた筈のヴィータの様子が急変。 腕が微弱に痙攣し、額には血管が浮き出る。 目もつり上がり、まるで鬼の形相かと見紛う程だ。 そして何より、怒りの対象であるガロードだけでなく、無関係のウィッツやロアビィまでもが鳥肌を感じる程の、炎のように赤い殺気を全身に漲らせていた。 「お前ら、引っ込んでろよ……」 腹の底から絞り出したような低い声で後ろの三人を威圧するヴィータ。 既に彼女の手にはハンマーフォルムとなったグラーフアイゼンが握られている。 そして次の瞬間。 「こいつはあたしがぶっっっっ殺す!!!」 阿修羅と化したヴィータがガロードに突撃した。 話し合いを持ち掛けた方がこれでは、もう話し合いも何もあったものではない。 後ろで傍観していたシグナムは、己の考えを直ちに訂正したという。 やはりヴィータはヴィータか……と。 一方、急に襲われたガロードはヴィータを迎えうち、激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。 「くっ……!」 「うぉおりゃあああ!!」 ヴィータのとてつもない気迫に押されて行くガロード。 グラーフアイゼンとGXの刃の交差部からは激しい火花が飛び散っていた。 ――このままじゃやられるっ! 危機感を覚えたガロードは全力を持ってグラーフアイゼンを押し返す。 しかしヴィータが後退する気配は微塵もない。 寧ろヴィータの力は増していき、ガロードの方が更に押し返されていた。 それに気づいたガロードはとっさに分が悪いと判断。 押し返すのではなく受け流そうとGXの刃を傾ける。 「うおっ!?」 これは思いの外うまく行った。 真正面に膨大な力が掛かっていたグラーフアイゼンが魔力刃の上を滑るように振り下ろさる。 そのままガロードの体ギリギリを素通りし、地面に小さなクレーターを作った。 ヴィータもグラーフアイゼンと共に大きく前へ仰け反り、大きな隙が生じる。 チャンス到来だ。 ガロードはがら空きになったヴィータの背にGXを振り下ろした。 だがヴィータもこのまま黙ってはいない。 地面を抉って無理やりグラーフアイゼンを引っ張り出し、柄でGXの刃を防ぐ。 「なっ!?」 「ヌルいんだよっ!!」 ヴィータの力技に驚愕し目を見開くガロード。 その瞬間今度はガロードに隙が生まれた。 ヴィータの鋭い目線がそれを捉える。 GXをガロードごと押し返すとグラーフアイゼンを大きく振りかぶった。 「しまっ……!!」 「おらあああああああ!!」 「飛龍一閃!」 鉄槌の一撃がガロードを襲うかと思われたその時。 二人を紫の光龍が襲った。 光龍を素早く視界の端に認めたヴィータはその場から後ろへ跳躍し難なく交わす。 しかし反応が遅れたガロードは直撃こそ免れたが、衝撃波をまともに受けた。 吹き飛ばされ、背中から地面に滑り落ちる。 そのままティファの隠れている岩陰まで砂埃を上げながら引き擦られていった。 「引っ込んでろっつっただろ!!」 今のでヴィータの怒りの矛先が変わったのか、彼女は魔法が飛んできた方を睨みつける。 視線の先にはシグナムが涼しい顔で立っており、愛機であるレヴァンティンを鞘に納めていた。 「お前こそ熱くなりすぎた。我々の任務は飽くまでティファ・アディールの保護。このままお前が暴れれば、近くに隠れているであろう彼女にも危険が及ぶぞ」 「ちぇ! わぁってるよ!」 シグナムの忠告をすんなりと受け入れたものの、やはり怒りの熱(ほとぼり)は冷めないらしい。 つまらなそうに吐き捨て、グラーフアイゼンを肩に担いだ。 吹き飛ばされたガロードはというと、シグナムがヴィータに説教をしているうちに岩陰のティファの下へ戻っていた。 ヴィータの怒りが籠もった攻撃を受けた手は、デバイド越しだったというのに未だに少し痺れている。 ガロードは手を強く振って痺れを紛らわし、同時にヴィータを戒めるシグナムの言葉にしっかりと耳を傾けていた。 そしてシグナムの説教が終わった直後、新たな策がガロードの頭に閃く。 (そ、そうか、あいつらティファを狙ってるんだっけ。それじゃあ……) なんとかこの場を切り抜けるため、ガロードはティファに向き直った。 一方、ヴィータの暴走により蚊帳の外へ追いやられたウィッツとロアビィは、ティファが隠れている岩陰のすぐ側まで近付いていた。 既にティファを視認しており、今にでも確保出来る程の距離だ。 (しっかし、シグナムさんも策士だねぇ。ヴィータちゃんの暴走餌にして、その隙に俺達が目標を確保しろってんだから。出来る女って、俺好みかも) (そうかよ。……そろそろ行くぜ、あのガキ戻って来やがった) (おっ、それはちょっと不味いね。じゃ、1、2の3で行こうか?) (ガキか。まぁいい……1) (2の……) ――3っ! 念話をそこで切り、ウィッツとロアビィはガロード達へと襲いかかる。 いや、襲いかかろうとした。 「っ! 待て!」 「何ぃ!?」 ロアビィが声を張り上げウィッツを引き止めた。 ウィッツも目の前の光景に思わず目を見開く。 なんと、再び岩の上へと躍り出たガロードがティファの首に魔力刃を突きつけているのだ。 驚いたのはウィッツ達の反対側にいるシグナム達も同じで、絶句したまま動けないでいる。 「これでどぉ? 撃てるもんなら撃ってみる!?」 「このヤロっ!」 「おおっと動かない。この子に傷がついちゃってもいいわけ?」 「くっ!」 ティファの首に突きつけられた魔力刃を強調するようにちらつかせ、ガロードは強気の態度でヴィータを脅す。 頭に血が上っていたヴィータも、今度ばかりは迂闊に手が出せないでいた。 そしてヴィータの反応を目の当たりにしたガロードは、今度こそ自分が優位に立ったことを確信し、更に畳み掛けるように言葉を続ける。 「やっぱ撃てないよねぇ? なんたって、あんた達の狙いはこの子なんだから! 少しでも下手なことしたら、どうなるか分かってるよね?」 「ちぃっ! 卑怯なマネを!」 「なかなかやるじゃない」 「ハートのエースはこっちが握ってるって事、お忘れなく!」 『Reflector wing』 シグナム達四人にただならぬ緊張感が漂う中、ガロードの背に銀色に輝く『X』を象った魔力の翼が現れる。 するとどうだろう。 ガロードの体がティファと共に二、三センチ程地面から浮き上がった。 「じゃあね!」 シグナム達に軽くウインクし、ガロードはティファを抱えたまま岩の上から飛び上がった。 そのまま地面に着地し、ホバリングのように地面から少し浮いて一目散に森へ疾走する。 スピードはなかなか速く、滑走した後に砂埃を巻き上げていった。 しかし、それを黙って見つめている程ウィッツの気は長くはない。 「あの餓鬼っ! 馬鹿にしくさって!!」 「待てっ!」 エアマスターの銃口を向け今度こそガロードを狙撃しようとした時、今度はその行動をシグナムによって制止させられた。 「何回も何回も止めんじゃねぇっ!!」 「今攻撃すればティファ・アディールにも確実に当たるぞ!」 「っ! ……くそっ!!」 いい加減に嫌気がさしたウィッツは激情し、シグナムに食ってかかる。 だがシグナムの尤もな意見の前に、ウィッツの怒りはまたも不発に終わった。 溜まった鬱憤をぶつけるように足下の小石を思い切り蹴飛ばす。 そうこうしている内にガロードの姿は既に無くなり、舞い上がった砂埃だけが虚しく漂っていた。 その光景に溜め息をつき、ロアビィはウィッツに話し掛ける。 「俺は一度フリーデンに戻るよ。契約がある間はデバイスのメンテとかタダだし。あそこの技師、腕いいんだよね」 「俺も一服するぜ。……ったくよぉ、一休みしないと腹の虫が収まらねぇ!」 「あたしもだ!」 内から湧き上がる殺意を隠そうともせず、ウィッツとヴィータはフリーデンへ向かって飛び立った。 そんな二人に呆れたのか、シグナムは小さな溜め息をつくと同じくフリーデンへと飛び立つ。 ロアビィはその後を追うように、足に装備したローラー型デバイスで地面を疾走していった。 その頃、上手くシグナム達を撒いたガロードはすぐさま魔力刃を消し、抱えていたティファを降ろた。 辺りの安全をしっかり確認し、バリアジャケットを解除する。 青白い光がガロードを包み、一瞬の内に元の赤いジャケット姿へと戻った。 そしてティファへと向き直り、すこし不安げな表情で彼女の顔を見る。 「……ごめんな、怖くなかったか?」 首に傷がついていないか確認し、心底済まなそうに謝るガロード。 それ対し、ティファは口元を緩ませ仄かに微笑む。 「信じて、いたから」 ティファのこの一言に、ガロードの心が一気に軽くなる。 不安は安心へと変わり、こそばゆい気持ちにティファを直視できなくなる。 「……うん」 照れくさそうに頬を掻きながら、ガロードもティファに微笑み返した。 人質にしたのだから流石にティファも自分に不信感を抱いたのではと不安に思っていたガロードだったが、それはいらない心配だったようだ。 そんな和やかな雰囲気の中、二人を茂みの中から見つめる人影が一つ。 鋭く光るその視線は、ガロードの手にしているGXに注がれていた。 (へへへっ……こりゃ、久々に透き通った酒にありつけるぜ) AFTER WAR LYRICAL NANOHA XtrikerS- 戻る 目次へ 次へ
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表紙の折り返しコメント 藤真拓哉 この度は、「魔法少女リリカルなのはvivid」第2巻を購入していただきましてありがとうございます。 4期シリーズとして始まった「リリカルなのはVivid」、皆様の応援のおかげで2巻も無事出すことが出来ました。 これからもよろしくお願いします! この2巻からはオフトレ編がスタート、3日間の様々な出来事の中でヴィヴィオとアインハルトの2人がどのように成長していくのか、注目です。 またこの巻から出てくる《新技》も楽しんでいただけたら嬉しいです^^ それでは本編をお楽しみください!「魔法少女リリカルなのはVivid」第2巻はじまります。 都筑真紀 無闇に作家歴が長い分、すでに相当な数の「主人公」を生み出しているはずの自分ですが、 ヴィヴィオほど明るくて屈託ゼロな主人公って初めてだな、って事に、ついさっき気がつきました。 そんなヴィヴィオは今後も曲がる事なく、リリカルでマジカルにがんばっていく予定です。 帯の武内崇のコメント 可愛いはもちろん正義。だけど、正しいだけでは勝てない戦いがある!可愛く、しなやかで頼もしい!これが最先端の熱血魔法少女活劇!! 長谷川光司のあとがきコメント コロナいーですよね。 いよいよ2巻ですねぇ。すっきりした線と柔らかい質感が大好きです。この先の展開も楽しみにしてますですよ。 長谷川光司先生から応援コメントをいただきました。 あとがき 2巻です。合宿編です。 相変わらずゆるっとまったり、時々懸命路線で進んでいっております。ところで制作秘話というか、ViVidのもう一人の主人公、アインハルトが生まれたいきさつとか。 娘TYPE誌上での「Force」は新規主人公で「重大事件」を描くストーリーとして、コンプエース誌上の「ViVid」はヴィヴィオが主人公であんまり重くならない話。 ここまではあっという間に決まったのですが、実は一番最初の企画段階では「スポーツ格闘」のラインはまだ存在しておらず、 「ヴィヴィオメインの学園&ホームコメディもの、時々事件」くらいの方向性で考えていました。 そんな叩き台状態で組んだストーリープロットは、まだ格闘技やスポーツの要素はそれほどなく、 ヒロイン役として置いていたキャラも、「無口系で受け身型で謎多きヒロインだけど、実は戦闘力が高くて、 主人公(ヴィヴィオ)と闘う事になる」というくらいしか決まっておらず、かなりふんわりしていました。 でも、そんな叩き台状態のストーリープロットを見てくれた藤真先生が、初回打ち合わせの時に「ちょっと描いてきてみました」 と見せてくれた「少女」が今のアインハルトでした。 頂いたその「少女」の絵からはすぐに今の設定や「ViVid」が目指す作品ジャンルやストーリーラインが出来上がっていって なんだかかなりあっという間に今の「覇王っ子」アインハルト・ストラトスが完成しました。 2巻では大分、素の天然度合いも披露されてきてヴィヴィオとの会話やかけあいは、書いていてとても楽しいです。 そして成長過程まっさかりのヴィヴィオや生まれたてのクリスはもちろんとして、アインハルトも「作中で育っていく子」だったりします。 過去と向き合ったり、前を向いたり上を見上げたりしながらヴィヴィオやリオコロ・周りの大人達と一緒にアインハルトも日々育っていきます。 のんびり見守っていっていただけたら嬉しいです。 都筑真紀 追記…いろんな人に「いったい何があったの?」と心配(?)されたルーテシアですが 特に何もありません。もともとこんな子です。 アギトあたりに言わせると「性格変わった」という印象すらないらしいです。「そういえば声が大きくなったかな」くらいで。 藤真です。「魔法少女リリカルなのはViVid」1巻の発売から半年、ついに2巻が発売になりました!! これもたくさんの応援をしてくれているみなさんのおかげです。 ツイッター、ミクシィ、ブログ、はがき、とても暖かいコメントを本当に、本当にありがとうございます! いっぱいの元気を頂いていますよ!! さて、この2巻からはオフトレ編スタート!ということでたくさんのキャラが登場し、ますます賑やかになって来ました。 ついにヴィヴィオの友達、リオ、コロナもバリアジャケット姿をお披露目。 次巻ではヴィヴィオ、アインハルトとともになのはやフェイトにどう立ち向かっていくのか、ますます 白熱するバトル 合宿を楽しんでいただければと思います(笑)! たくさんのキャラといえば少し前、都筑先生に、「ViVid 好きに書いちゃってますが作業量とか大丈夫ですか?」とおっしゃて頂きました。もちろん大丈夫です!! 藤真も全力全開で楽しく描かせていただいてますよ!だって「せーの!」で12人全員変身ですよ! 藤真のテンションも上がるというものです(笑)。これからもテンションアップでがんばりますっ!! そして3巻ではなんと、限定版が出ます!「ヴィヴィオのねんどろいどぷち」が付きます! 祝!ヴィヴィオ初ですよ!!この本が発売している頃には予約が始まっていることと思いますので こちらのほうも合わせてよろしくお願いしますね! では、また3巻でお会いしましょー! 2010.06 藤真 拓哉
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魔法少女リリカルなのは/魔法少女リリカルなのはA sビジュアルファンブック 魔法少女リリカルなのはシリーズ 魔法/世界観に関する資料
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ViVidのあとがき 都筑編 ViVidは「スポーツ格闘少女まんが」です 本作がコンプエース誌上で連載が決まったのは、実はわりと急な話でした。 そんな中、作画を、当時「ネギま!?neo」でブレイク中だった藤真先生にお願いできると言う事が決まって ヴィヴィオを主役にして、シリーズの原点回帰っぽい、2人の少女を主軸に置いたお話にしようと言う事がその時に決定しました。 で、自分の作品作りは、上記のようなメインの項目が決まった後に「実際どういった話にするか」は既存のジャンルを2つ3つ錬金釜に放り込んで 「ちょっと変なジャンル」を練成することから始まります。 ViVidの時に釜に入れたのは「少女と少女の心の触れあい、そして成長もの」と「スポーツとしての格闘技」でした。 アニメのリリカルシリーズは、比較的「重くて痛い」事件がベースにあります。 (そんな中、誰よりも強い大人になりたいと願い、ある意味で「そうなる必要があった」少女がシリーズの主人公であり、 本作主人公ヴィヴィオの母親「高町なのは」その人なのですが) でも「ViVid」では、重くて痛い話はなるべく避けよう、というのをメインテーマとして置きました。 同時連載中の「Force」がわりと重痛い展開になるからというのもありましたが、戦争や、人殺しや、悲惨な事件や心と体を重く傷つけ、 深い傷跡を残すような「戦い」でなくても心のありかた、悲しみに立ち向かう強さを描くことはきっとできるということ。 技と心を磨いて、定められたルールの中で相手と競い合い、高めあう。 そんな「ピュアスポーツとしての戦い」の面白さと清清しさを、この作品では主軸として書けたらいいなと思っています。 まあそんな固い話はさておいて、ヴィヴィオを中心とした、 どこかゆるっとしたこの平和な「次世代型魔法少女」の空気を楽しんでいただけたら、それだけで幸せです。 きっと長いつきあいになるこの作品、藤真先生と一緒に、リリカルマジカルがんばります。 ViVidのあとがき 藤真編 この度は「魔法少女リリカルなのはViVid」第一巻を手に取っていただき誠にありがとうございます! 連載開始当初、藤真は他誌での連載を2本抱え月刊3本の連載をしており かなり必死な思いで漫画を描いていたのを思い出します。今でもあまり変わりませんが(笑。 それでも「ViVid」におきましては雑誌連載当初からみなさまのハガキなどの 応援、かなりの反響を頂き、勇気づけられながらここまでやってくることが出来ました。 本当に本当にありがとうございます! そのため雑誌では沢山の付録を付けて頂くことが出来ました。 下敷きに始まり、クリアファイル、ポスター、スティックポスター、カレンダー、 最後のカレンダーにつきましては全部ではないものの、これまでのカラーが沢山使われているので是非見て頂けると嬉しいです。 この連載のお話を頂いたとき、「魔法少女リリカルなのは」の新作を漫画で、ということ、 「なのは」、「フェイト」の娘である「ヴィヴィオ」を主人公にする、ということで、 もちろんこれまでのシリーズを全話見ている自分としては、話を聞いているだけで緊張とワクワクが止まりませんでした。 都筑先生から第一話のシナリオを頂き読み終えて、ああ、まさしく自分は「なのは」を描くんだ。とドキドキしながら描きましたね。 そんな緊張感も伝わっていただけるといいなと思います。 そして新作、ということでもちろん新キャラも登場しています!「 アインハルト」「リオ」「コロナ」この3キャラについては藤真がデザインを担当させていただきました。 ブログ等にも描いたことがありますが、中でもアインハルトは都筑さんに シナリオ案をもらって読んで、直後にはキャラ案がもう出来ていました。 そのくらい印象の強いキャラでしたね。 都筑先生にもお会いしたときに、実はもう描いてあるんです。と(笑。都筑先生にも一発OKを頂いた奇跡のキャラです。 この3人が今後、ヴィヴィオと一緒にどう成長していくか、楽しみにして頂ければ幸いです。 アインハルトはもちろん、コロナとリオについてもいろいろ活躍があるらしいですよ(コソっ。 長期連載も決まっていますよ(コソコソっ。 また「なのは」につきましてはこの「ViVid」にとどまらず、いろいろとやらさせて頂いています。 「ラジオストライカーズHPトップ画像」、「ラジオストライカーズ体験リポート漫画」 「なのはASポータブルイラストストーリー(絵)」「劇場版しおりイラスト」などなど。 これからもいろいろあるかもしれませんので、そちらのほうも見て下さいね。 それでは、これから長いお付き合いになると思います。「魔法少女リリカルなのはViVid」、 作品のほうはゆるっと、そして時には熱く!と言う感じですが、 こちら制作サイドではガンガン熱く(笑、がんばっていければと思いますので、今後ともよろしくお願いします!!
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第7話 【進展】 ティアナ「最初の出動の時も、それなりに上手くはいったけど、ただそれだけだった……。 毎日の訓練も、あんまり強くなってる実感がしない。手の中には、優秀すぎる相棒がいて、 私の周りには天才と、歴戦の勇者ばっかり。今も疑問に思ってる。自分が何でここにいるのか。 あの人は何で、私を部下に選んだのか。魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 はやて「これまで謎やったガジェットドローンの製作者、およびレリックの収集者は現状ではこの男、 違法研究で広域指名手配されてる次元犯罪者…ジェイル・スカリエッティの線を中心に捜査を進めている」 フェイト「こっちの捜査は、主に私が進めるんだけど、皆も一応覚えておいてね」 一同「はい!!!」 リイン「で、これから向かう場所がここ。ホテル・アグスタ!」 なのは「骨董美術オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」 リイン「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、 その反応をレリックと誤認したガジェットが出てきちゃう可能性が高い。ということで、私たちが警備に呼ばれたです」 フェイト「この手の大型オークションだと、密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、色々油断も禁物だよ」 キャロ「シャマル先生。その箱、何が入ってるんですか?」 シャマル「隊長たちのお仕事着」 はやて「会場内の警備はさすがに厳重、と」 なのは「一般的なトラブルには十分に対処できるだろうね」 はやて「外は六課の子達が固めてるし、入り口には防災用の非常シャッターもある。 ガジェットがここまで入ってくるんいうんはなさそうやしな」 なのは「うん。油断はできないけど、少し安心」 はやて「ま、どっちにしても私たちの出番は非常事態だけや」 スバル「八神部隊長が使っているデバイスが魔道書型で、それの名前が夜天の書っていうこと。 副隊長たちとシャマル先生、サフィーラは、八神部隊長個人が保有してる特別戦力だって、こと。 で、それにリィン曹長合わせて六人揃えば無敵の戦力…ってこと。 ま、八神部隊長たちの詳しい執事とか能力の詳細とかは極秘事項だから、私も詳しくは知らないけど」 ティアナ「レアスキル持ちの人は皆そうよね」 ティアナ「六課の戦力は、無敵を通りこして明らかに異常だ。八神部隊長がどんな裏技を使ったのかは知らないけど、 隊長格全員がオーバーS…副隊長でもニアSランク。他の隊員たちだって、 前線から管制官まで未来のエリートたちばっかり。あの歳で、もうBランクをとってるエリオと、 レアで竜召還師であるキャロは二人ともフェイトさんの秘蔵っ子。あぶなかっしくあっても、 潜在能力と可能性の塊で、優しい家族のバックアップもあるスバル。 やっぱり、うちの部隊で凡人なのは私だけか。……だけど、そんなの関係ない。 私は、立ち止まるわけにはいかないんだ」 ゼスト「おまえの探し物は、ここにはないのだろ?……何か気になるのか?」 ルーテシア「うん。……ドクターのおもちゃが、近づいてきてるって」 シャマル「前線各員へ。状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合管制と合わせて私、シャマルが現場指揮を行います」 ヴィータ「新人たちの防衛ラインまでは一機たりともとおさねぇ。速攻でぶっつぶす」 シグナム「おまえも案外過保護だな」 ヴィータ「うるせーよ!」 なのは「フェイトちゃん。主催者さんはなんだって?」 フェイト「外の状況は知らせたんだけど、お客の避難やオークション中止は困るから、開始を少し延ばして様子を見るって」 なのは「そう…」 ティアナ「これで…能力リミッター付き…」 ルーテシア「ゼストやアギトはドクターが嫌うけど、私はドクターのことそこまで嫌いじゃないから」 ヴィータ「急に動きがよくなった」 シグナム「自動機械の動きじゃないな」 シャマル「有人操作に切り替わった」 シャーリー「それが、さっきの召還師の魔法?」 スバル「召還って、こんなこともできるの?」 キャロ「優れた召還師は、転送魔法のエキスパートでもあるんです!」 ティアナ「証明するんだ。特別な才能や凄い魔力がなくたって、一流の隊長たちの部隊でだって、 どんな危険な戦いだって…私の、ランスターの弾丸はちゃんと敵を打ち抜けるんだって!」 ヴィータ「ティアナ!このバカ!無茶やったうえに味方打ってどうすんだ!!」 スバル「あの!ヴィータ副隊長。今のもその、コンビネーションのうちで」 ヴィータ「ふざけろタコ。直撃コースだよ、今のは!」 スバル「違うんです!今のは私がいけないんです!よけ…」 ヴィータ「うるせーバカ共!もういい!後は私がやる!二人まとめて、すっこんでろ!!」 ヴィータ「ティアナは?」 次回予告 スバル「後悔も、悲しみも、立ち上がる力に変えて…。私たちはずっと、そうやって歩いてきた。 次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS…第8話、願い、ふたりで。…私は、ティアのパートナーだから!」
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新暦75年。 次元震の地球への影響は著しかった。 環境の激変や生態系の破壊が起こり、唯一の望みである魔法技術も殆どが失われ、復興も絶望的な状況となった。 度重なる次元震の余震や治安の悪化も手伝い、人々に安息が訪れることはなかった。 だが、それでも人は生き続けた。 ……いや、生きねばならなかった。 戦後15年、地球環境はようやく安定期に入った。 次元震の余震もだんだんと形を潜め、禁止されていた次元世界間移動も解禁された。 その際、アフターウォーからミッドチルダへの移民が続出し、ミッドチルダでも受け入れへの対策が本格的に始まってきていた。 しかし、アフターウォーに暮らす人々に比べると、移民者の数はまだまだほんの一握りに過ぎなかった。 皆、自分の生まれ故郷である地球を見捨てることが出来なかったのである。 アフターウォーに残った人々は来たるべき時代に望みを託して、『今日』を必死で生きている。 そしてここにも、『今日』を生きる人々が作った街があった。 灼熱の日が注ぐ砂漠の中にある小さな街。 建造物はどれもボロボロであったが、街には人々が溢れていた。 そして人々には笑顔があった。 その姿は、今の時代の惨状を忘れさせるほど輝かしいものだった。 「前の戦争で、超能力を使う兵隊がいたという噂を聞いたことがあるだろう? あれは根も葉もない流言、デマの類かというとそうではない!」 そんな人が賑わう街の中、二人の男を囲む小さな人だかりが出来ていた。 大道芸でも始まるのかと期待しているのだろう、男の長々しい前口上に人々は真剣に耳を傾けていた。 二人の男の片方、汚らしい軍服を着た小太りの男は更に声を張り上げ、観客に向かい話を続ける。 「実はこの男こそ、超能力兵士の生き残り。かの戦いでは、自分と二人で15隻の戦艦を沈めたというのだから間違いない! 人は我らのことを『赤い二連星』と呼んだ!」 「私こそ、新時代を迎えた人類の進化すべき姿」 小太りの男が話を一旦止め、黙って座っているだけだったもう片方の男が口を開いた。 観客の視線が今度はそちらに移動する。 男は額に傷があり、如何にも歴戦の兵士と言った雰囲気を醸し出していた。 小太りの男……もとい赤い二連星の太い方は掴みに確かな手応えを感じ、更に話を続ける。 「この混迷の時代、我らの力こそ必要なのである! どうだろう!? 我々を雇うなら今しかないぞ!」 「さぁっ!」と、赤い二連星の太い方が急かすように付け加える。 が、彼の口から『雇う』という単語が出た途端、観客の間には落胆したような微妙な空気が漂った。 目を輝かせていた子供達ですら白い目で二人を見ている。 「なんだぁ? 新手の職探しかよ」 観客の一人がそう呟いた。 それに釣られて他の観客も苦笑いを浮かべ始める。 しかし、赤い二連星の太い方はその言葉が癪に障ったのか、演説の時よりも声を張り上げ反論を始めた。 「な、何を言う! 今はこう汚い身なりをしているが、いざとなれば……」 と、これから話が本題に入ろうとした時だった。 突然耳を貫かんばかりの爆音が街中に響いた。 なんと赤い二連星の二人が演説をしていた後ろ建物の看板がいきなり爆発したのである。 赤い二連星の声はその音と眩い光に遮られ、ギャラリーは何が起きたのか分からず狼狽えている。 そして、大通りいた誰かが大声で叫んだ。 「ま、魔導師だっ!」 次の瞬間、街の入り口付近から放たれた砲撃魔法により、街は再び爆音に包まれた。 第一話 「月は出ているか」 「ヘッヘッ、今日はイイ仕事が出来そうだぜ」 砲撃魔法で街を破壊した張本人、趣味の悪いバリアジャケットを身に纏った流れの魔導師・クロッカは上機嫌だった。 それというのも、襲撃した同業者から時空管理局武装隊専用のストレージデバイスを仕入れたからだ。 武装隊専用と言うだけあり、デバイスには様々な魔法が記録されていた。 早速どこかで一仕事と意気込んでいた時、ちょうど見つけたのがこの街だったのだ。 「さぁて、どこから漁るか」 クロッカは杖を構え、街の中を品定めするように見回す。 だが、街を破壊された人々も黙ってはいなかった。 「クソぉお! 野党め!!」 「街から出てけっ!」 拳銃、ライフル銃、マシンガン、極めつけはロケットランチャーと、時空管理局が禁止している質量兵器の数々を人々は構えた。 自分の身は自分で守る。 アフターウォーで生きてゆく為には、質量兵器を使ってでも戦わなければならないのだ。 質量兵器を構えた人々は、それが当然のことのように引き金を引いた。 一気に弾丸が発射され、クロッカを襲う。 「おい」 『Protection』 弾丸がクロッカに着弾する直前、彼を覆うように現れたバリアが、降り注ぐ弾丸から彼を守った。 基本防御魔法であるプロテクションを発動したのだ。 弾丸は全てプロテクションに防がれ、パラパラと地面に落ちる。 プロテクションの強固な守りは、ロケットランチャーの弾丸さえ防いだ。 そして、攻撃されている当の本人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。 「ちっ、何も皆殺しにしようって訳じゃねぇんだが……そっちがその気なら容赦しないぜ!!」 弾丸の雨が止んだ一瞬を見計らい、クロッカはプロテクションを解いた。 その刹那、デバイスの杖先から直射型の魔力弾が放たれる。 放たれた魔力弾は直撃と同時に爆発を起こし、街の被害を拡大させていった。 非殺傷設定が解除されているのか、その破壊力は無慈悲としか言いようがなかった。 着弾点には大怪我を負って動けなくなってしまった人が転がっている。 街の人々はクロッカの猛攻を止めようと必死で抵抗を続けるが、弾丸は魔力弾により打ち消され全く意味を成さなかった。 「くうぅぅ! お、おい! どうにかしろよ! 赤いなんとかなんだろ!?」 地面に伏せ、先程赤い二連星の話を聞いていた男が二人の方を向く。 が。 「ひいいぃっ!」 「た、助けてくれえ!」 今がいざという時だというのに、肝心の二人は既に遠くへ逃げていた。 次の瞬間には魔力弾の餌食になっていたが。 「くっ……魔法が使えれば何でもありかよ! せっかく街も軌道に乗ってきたっていうのに……!」 クロッカから少し離れた建物の中に、子供や老人、怪我人など戦えない人々が避難していた。 大通りからは陰になっている為気付かれてはいないが、時間の問題だろう。 外の惨状を歯噛みしながら見つめるしかないことに憤りと、いつ襲われるか分からない不安が人々を包む。 それでも彼らにはどうすることも出来なかった。 その中にいた一人の少年を除いては。 一方屋上では、赤ん坊を背負った初老の女性がスナイパーライフルでクロッカを狙っていた。 横にはもう一人彼女の子供がおり、不安げにライフルを見つめている。 「いくら魔導師でも、砲撃の隙を狙えば……」 スコープを覗きながら砲撃の隙を伺う。 魔力チャージ、まだ撃てない。 魔力弾を放った、隙は出来ない。 レンズの中心点にクロッカの眼球が来たとき、砲撃後の隙が生じた。 「喰らえっ!」 ライフルから鋭く尖った弾丸が撃ち出される。 そのまま頭を貫き、クロッカは絶命……する筈だった。 しかしライフルの弾はクロッカに当たらず、彼の一歩手前でバリアに弾かれ、地面に虚しく転がった。 「なっ!? オートガード!?」 女性もここまでは予想していなかったらしい。 気付かれまいとライフル銃を引っ込めるが、今の一撃はクロッカに居場所を知らせてしまった。 クロッカのデバイスが親子に向けられる。 誰もが撃たれると思った次の瞬間、避難場所にいた少年が一人、クロッカに向かって駆け出した。 「ん……?」 少年に気付いたクロッカが、デバイスをそちらに向ける。 しかし先に動いたのは少年の方だった。 手に持った小瓶をクロッカへ思い切り投げつけたのだ。 当然オートガードが働き、少年が投げた小瓶を防ぐ。 瞬間、小瓶が破裂し、目を焼かんばかりの光がクロッカを襲った。 「うわあぁっ!? め、目があ!!」 フィールド系の防御魔法でない限り、光を防ぐことなど出来ない。 それに目だけはどうやろうとも鍛えられないのだ。 少年の狙いはまさにそこだった。 「く、くぅ……や、野郎っ!! いったい誰が!?」 「俺だよ!」 「うぉっ!」 視力がまだ回復仕切らぬクロッカの後頭部に、黒く冷たい鉄の塊が押し付けられた。 もちろん拳銃である。 引き金に指を掛けているのは、先程の少年だった。 「へへん。いわゆる『ホールドアップ』ってやつ?」 「こいつ……いつの間に!」 「おぉっと、動かない。この距離なら、魔法を使うよりこいつを撃つ方が早いよ? きっと」 少年が引き金に掛けている指に力を込める。 強く押し付けている為、そんな小さな動作さえ事細かに伝わった。 クロッカは観念したのか、抵抗する素振りを全く見せない。 「……へっ、気に入ったぜ、小僧。なんだったら俺の仲間にしてやっても……」 「寝呆けたこと言ってないで、ホールドアップだってば」 「ひっ」 クロッカの後頭部に更に強く銃を押し付ける少年。 今度こそ観念したのか、クロッカはデバイスを手放した。 同時にバリアジャケットが分離し、下からこれまた趣味の悪い服が現れる。 「オッケー。じゃ、解放っと!」 「うわぁっ!」 少年はバリアジャケットの分離をしっかり見届けてから、クロッカの尻を思い切り蹴飛ばした。 バランスを崩し、地面につんのめるクロッカ。 だが彼への天罰はまだ終わらない。 気が付けば、彼は手に手に鈍器を持った住人達に囲まれていた。 「野郎……!」 「分かってんだろうなぁ?」 「うわわわ……た、た、た、助けてくれええぇ!!」 この後、彼は血祭りに上げられる。 因果応報、悪いことはどんな世界であっても出来ないものだ。 それはさて置き少年はというと、住人達にクロッカとは違う意味で囲まれていた。 「やるじゃねぇか、ガキ」 「へっへっへ~。ブイッ!」 街を救ったヒーローに賞賛の言葉を浴びせる住人達。 その言葉にすっかり気を良くしたのか、少年は満面の笑みで受け答えをしていた。 「ガロード・ランさんですわね?」 「あん?」 ふと、少年――ガロード・ランは、自分を呼ぶ声に気が付いた。 声がした方を見ると、メガネを掛けた女性が彼に向かって愛嬌たっぷりに微笑んでいた。 「やっぱりそうですわぁ。私はクアットロ、あなたをずっと探していたんです」 「仕事の話?」 「はい」 「だったら後にして」 並の男ならば、こんな台詞を女性に言ってもらったらドキリとするだろう。 しかしガロードの目に今映っているのは、美しい女性ではない。 クロッカが持っていたデバイスだった。 「こいつを金に変えるのが先だぁ!」 デバイスを拾うと、ガロードはあっという間に流れメカ屋の方へ走っていった。 「それにしても勿体無いですわねぇ。せっかく手に入れたデバイスを売ってしまわれるなんて」 流れメカ屋にデバイスを売ったガロードは、クアットロと名乗る女性と共に喫茶店へ入っていた。 店の窓からは、壊れた建物を修理する人々の姿が見える。 「でもないよ? 結構イイ値で売れるしね」 コーヒーカップを傾けながら、クアットロの言葉に軽く答えるガロード。 しかしクアットロは満足していないのか、眉間に小さな皺を寄せた。 「そうじゃありませんわ。あなたは魔法を熟知していらっしゃる。魔導師としても相当な使い手の筈ですわよぉ?」 クアットロの言葉に、今度はガロードが皺を寄せた。 「お断りだね! 確かに魔導師はいい商売だし、腕が良ければ管理局で雇ってもらえるけど、代わりに命も狙われるでしょ? まっ、デバイスは戦争の残した最高のお宝だからね」 そこまで言って一端話しを切り、窓の外へ視線を向ける。 重傷人を乗せた担架が、寂れた医療施設へと運ばれているところだった。 それを見て、ガロードの表情は更に厳しくなる。 「それに、魔導師同士が相手のデバイス狙って戦うっていうんだろ? ミッドはミッドで軍人紛いのことやらされるらしいし。あんな物持ってたら、命が幾つあっても足んないよ。それに………」 窓の外を眺めていたガロードの表情が更に曇る。 そして少しの間があって。 「さぁて、仕事の話しよっか?」 物憂げな表情を見せたガロードに、クアットロは疑問符を浮かべた。 しかし次の瞬間にはガロードに笑顔が戻っていた為、詮索しようとはしなかった。 何事も無かったかのようにモニターを起動させ、ガロードに一枚の写真を見せる。 「ヒュー♪」 写真を目にしたガロードは、天使の絵でも見せられたのかと思った。 それほど写真に写っている少女は美しかったのだ。 写真の少女は白い透き通った肌をしており、栗色のしなやかな長い髪を後ろで結っている。 対照的な色合いだが、それが彼女の整った顔立ちを美しく魅せていた。 顔に表情は無かったが、吊り気味の目が少女の清楚なイメージをより一層引き立たせている。 ガロードの今の状況は、俗に言う、一目惚れだった。 写真に見入るガロードを横目に、クアットロは仕事の説明を始めた。 「詳しい理由は言いません。聞かれても言えないですけど。この少女、ティファ・アディールを助け出して欲しいのですわぁ」 「助け出す……?」 写真から目を離したガロードが、クアットロに注目する。 クアットロは小さく肯くと、鋭い目を光らせながら事の次第を説明し始めた。 「彼女は……バルチャーに捕らわれてしまったのですわ」 満月の下、整備のために森に鎮座する一隻の白い船があった。 時空管理局本局次元航行部隊所属、XV級大型次元航行船・『フリーデン』である。 主にロストロギアの探索やアフターウォー関連の事件を担当し、通常時は第15管理世界の管理などを業務とする船だ。 今回も時空管理局第15管理世界支部局の査察を終え、本局へ帰還しようとしていたところだった。 査察の他に、一つの非公式な任務を終えて。 「ふぅ……」 フリーデンの艦長室で、艦長のジャミル・ニート提督は小さく溜め息をついた。 余程疲れているのか、サングラス越しにもその疲労の度合いが伺える。 シートに身を預け、そのまま仮眠を取ろうと目を瞑った。 その時、扉が二、三度ノックされ、彼の眠りを妨げた。 「……どうぞ」 シートに腰掛け直し、扉の向こうの相手に入室を促す。 「失礼します」という声と共に扉が開き、管理局の制服を着た女性が2人入ってきた。 片方は焦茶色のショートがよく似合う穏やかそうな女性。 もう片方は吊り目とポニーテールが印象的な女性だった。 「お休みのお邪魔でしたか?」 「いや、大丈夫だ……今回は忙しいところをわざわざ同行してもらって済まなかったな。礼を言わせてもらおう、はやて二等陸佐。そしてシグナム二等空尉」 はやてと呼ばれた穏やかな印象の女性は、手を振りを加えてそれに答える。 「そんな、私等も前から一度来たいと思うとったんで、ちょうどよかったです。今までは規制やらなんやらでなかなか来れへんかったんで」 「それは『夜天の主』として、かな?」 「まぁ、そんなとこです」 ジャミルの口から『夜天の主』という言葉が出たとき、シグナムと呼ばれた女性の眉が少しだけ吊り上がった。 しかし悪気がないと悟ると、直ぐに表情を元に戻す。 どうやらこの言葉を聞くと、体が無意識に反応してしまうようだ。 守護騎士の性、というものだろう。 対するジャミルはさして気にした様子もなく、はやてとの会話を続けた。 「それで、用は何だ?」 「あ、せやせや。今回は私の協力依頼を受けてくれて、ホンマありがとうございます」 「いや、カリムからも協力するよう頼まれていた。それに、私も君には依頼を請けてもらっている。持ちつ持たれつというやつだ」 「流石ジャミル提督、話の分かるお人や」 ジャミルの返答に満足げに微笑むはやて。 はやてがジャミルにした依頼とは、ジャミルを含むフリーデンクルーの新設課への協力。 それに伴う船艦フリーデンの貸出許可だった。 そもそも古代遺物管理部に所属するはやては、ロストロギア探索を業務とするフリーデンクルーと仕事を共にする事が多かった。 その為ジャミルとは繋がりがあり、今回の協力依頼に踏み切った訳だ。 しかしタダでと言うわけにはいかず、ジャミルからもはやてに一つの依頼を出していた。 依頼と言うのは、ジャミルが長年探し続けている『ある物』への捜査協力だった。 本人曰わく、『現在存在しているかどうかも判明しておらず、見つけたとしても保護出来るか分からない』らしい。 今回の同行も協力の一つで、やっと見つかった『ある物』の護衛の為だった。 それが何なのか、はやて達は知らされていないが。 「ジャミル提督、一つよろしいでしょうか?」 「なんだ?」 はやてが粗方用事を伝えた後、今まで黙っていたシグナムが口を開いた。 因みに、今回の査察には八神家一同が参加している。 彼らのフリーデンクルーとの仕事は初めてであり、フリーデン搭乗時が初対面であった。 しかし、守護騎士達はジャミルの顔を見たときから、何か違和感を感じ続けていた。 「前に……お会いしたことがありませんでしたか?」 守護騎士が感じた違和感とは、既視感。 初めての筈なのに、前に会っている様に感じるというものだ。 この時、サングラスに隠れていた為シグナムは気付かなかったが、ジャミルの瞳には動揺の色が見え隠れしていた。 「なんやシグナム。ジャミル提督に逆ナンか?」 ぶち壊しである。 主にシリアスな雰囲気が。 流石のジャミルも椅子からずり落ちそうになった。 言葉の爆弾を投下した本人は、ニヤニヤと意地の悪い笑みでその顔を湛えている。 シグナムは必死ではやての言葉を否定しているが、意地悪い笑みが消える事はなかった。 その隙にジャミルは冷静さを取り戻し、サングラスを掛け直す。 「初めてで間違いない、安心してくれ」 「そ、そうですか」 「失敗かぁ……残念やったな、シグナム」 「だから違います!」 まだやるのか。 ジャミルは心の中で呆れ気味に呟いた。 はやてのこういったセクハラはフリーデンでも健在で、既に通信主任のトニヤ・マームと副官のサラ・タイレルが被害に遭っている。 蛇足だが、はやてによると二人とも見事に成長しているらしい。 「……コホン。主はやて、そろそろヴィータ達が待ちわびている頃かと」 「あぁ、そやね。それじゃあ、私等はこのへんで」 「ああ。他の騎士達にも宜しく言っておいてくれ」 「伝えておきます」 二人はジャミルに軽く会釈し、艦長室から去っていた。 「………ふぅ」 先程よりも大きな溜め息をつき、ジャミルは背もたれに寄りかかった。 何故か疲れが更に溜まった気がするが、気のせいだろうと思い直す。 そして瞼をゆっくりと降ろし、今度こそ仮眠に入った。 ふと浮かんだシグナムの先程の問いに、正しい答えを述べてから。 「……はやて二等陸佐が主人の君に会うのは、だがな」 「あ、そや」 艦長室を出て直ぐ、はやてはもう一つ尋ねようと思っていた事があったのを思い出した。 「どうかされましたか?」 「さっき支部局で女の子を船に乗せてたやろ? あの子は何なんか聞くの忘れてもうた」 「ああ……確か、アフターウォーでも有数な企業の研究所から保護したらしいです。人体実験に利用されていたとか……」 「……最近多いな、そういうん」 「そうですね……」 現在明るみになり始めた命への冒涜行為を思い出し、二人は沈んだ表情のまま自室へ続く廊下を進んだ。 静かになった廊下に館内放送が響き、出航時刻まであと10分であることを告げた。 時は遡り、ジャミルがはやてと会談していた頃。 フリーデン艦内を彷徨いている一つの人影があった。 管理局の制服も着ておらず、本局の船艦に乗るには全くそぐわない風貌。 人影の正体は、クアットロの依頼を請けたガロードであった。 フリーデンを整備する船員達の目を盗み、非常口から侵入してきたのだ。 「へへっ、ちょろいもんだぜ。こんな簡単に侵入出来ちゃうなんてさ。……にしても、これ本当にただのバルチャー艦? 外装はともかく、中は新型その物じゃん」 ガロードの疑問は尤もだった。 大体のバルチャー艦は、たくさんの船員を乗せて航行を繰り返している。 そのうちに船内外の至る所が汚れ傷つき、年代を感じさせる物になっていくのだ。 しかしこのバルチャー艦の船内は年代など全く感じさせず、アフターウォーには不似合いな清潔感さえ漂っている。 艦内の至る所に最新の設備が見受けられ、とても一塊のバルチャーの所有物とは思えなかった。 「ま、それだけ儲けてるって事かな」 だが、残念ながら(あるいは幸運にも)ガロードは思慮深い性格ではなかった。 自分が乗っている船が時空管理局の物とも知らず、船内探索を続行した。 「ん?」 早速先へ進もうとしたガロードだったが、左手にある部屋の前で立ち止まった。 プレートにはミッドチルダ語で『保管室』と書かれている。 その時、ガロードの野生の勘が宝の臭いを嗅ぎ付けた。 「……へへへっ。こんなに儲けてるバルチャーの船だもんね、御零れの一つも頂かないと」 善は急げとばかりに意気込むガロード。 ジャケットのポケットから自前の怪しげな装置を取り出すと、それを扉にくっつける。 すると装置が起動し、今まで厳重にされていた扉のロックがあっという間に解除された。 「よしっ!」 装置を仕舞い、すぐさま部屋の中へ入る。 保管室にはクロッカが持っていた物と同型のデバイスがズラリと並び、思わず舌なめずりしてしまう様な光景が広がっていた。 こんなお宝がどれでも選り取り見取り……というのは一瞬の儚い夢だった。 デバイスの一つ一つに持ち出せないようロックが掛かっており、無理に取り出せないようになっていた。 「ちぇ、やっぱり泥棒対策は万全か……ん?」 落胆しながら部屋を出ようとした時、ガロードは部屋の中心にある装置の上に何かが乗っている事に気がついた。 近づいて見てみると、それはガロードの掌より二回り程小さいデバイスだった。 恐らくこれは待機モードなのだろう。 『X』を象った銀色に輝く反射板の様な形をしており、裏には小さな文字で『GUNDAM X』と刻まれている。 幸い装置は起動しておらず、このデバイスだけが置き去りにされていた。 「おおっ! なんだか知らないけどラッキー! 有り難く頂戴するよっと」 デバイスを素早くポケットに忍ばせ、意気揚々と部屋を出るガロード。 その時、廊下に放送が響いた。 『発進まであと10分です。総員、至急持ち場に就いてください』 「まぢぃな……早くしないと……」 寄り道した事を少しだけ後悔しながら、ガロードは走り出した。 ―……ラ、ララ…ララ……― 「はっ……!」 しかし、またすぐに足を止めた。 どこからか透き通った美しい歌声が聞こえてきたのだ。 歌声に導かれるように歩みを進めると、一つの部屋に辿り着いた。 声は確かに中から聞こえてくる。 ガロードは意を決し、扉を開けた。 扉の先で、天使が歌っていた。 写真よりも美しい少女――ティファ・アディールの容姿に、ガロードは思わず目を奪われた。 月光を浴びて歌う彼女の神々しい美しさを前に、見とれる事しか出来なかったのだ。 「………」 ふと、ティファが歌うのを止めた。 ガロードの方を向き、二人の視線が重なる。 正面からみたティファの顔に、ガロードはまたも胸が鳴った。 「あ、いやー……あっ、おっ、俺ー……え、そのー……」 いざ何かを言おうとするガロードだったが、なかなか言葉が出て来ない。 そうこうしている内に、彼を怪しんだティファは少しだけ身を引いた……ようにガロードには見えた。 「ちっ! 違うんだ!! ……って、何が違うんだぁ? あ、あれ!? お、俺、何言ってんだ!?」 喋る度に頭の中が混乱するガロード。 今の彼は底なし沼にはまって沈んでいくような気分だった。それでもティファは何も言わず、ガロードの顔をじっと見つめ続けている。 「ああっ、あのっ、えっ……だから………そうっ! 俺、助けに来たんだ!!」 ガロードは漸く底なし沼から這い上がり、なんとかそれだけを言うことが出来た。 心臓は未だに早鐘を打っているが、混乱は少しだけ収まっている。 「本当に、助けに来たんだ」 今度は力を入れ、言葉をしっかりと口にする。 ティファに伝わるようはっきりと。 ティファもそれが分かっているのか、心無し表情が柔らかくなったようだ。 そして、堅く閉じられていた口を開く。 「……待って」 「えっ?」 「待って、いました」 「……うん!」 ガロードはただ一言だけ。 ティファから初めて掛けられた言葉に、大きく頷いた。 数分後。 発進予定時刻を迎えたフリーデンクルーは持ち場に就き、ジャミルもブリッジへ上がって来ていた。 横には是非ブリッジを見学したいと、はやてとリインフォースⅡの姿もある。 「メインエンジン起動! フリーデン、発進します!」 「待って! 非常用の転送システム、作動しています」 「なに? 転送先は?」 「モニターに表示します」 サラがキーボードを叩くと、メインモニターに映像が映し出された。 一台のバギーに一組の少年少女が乗っており、森へ向かって疾走している。 バギーの搭乗者が拡大された時、ジャミルの表情が変わった。 「あれは……!」 「あの子、確か支部局で乗せてた……」 はやては記憶の片隅に留めておいた映像を思いだそうとした。 が、その時船が大きく揺れ、またも映像は記憶の片隅に追いやられた。 「きゃああぁ!?」 「な、なんや!?」 「8時の方向から魔力反応! 魔導師4! バルチャー艦1!」 「くっ……! フリーデン、急速発進!」 魔導師の攻撃を避ける為、ジャミルはフリーデンを発進させる。 その間にも砲撃は止むことなくフリーデンに降り注いだ。 「バルチャー同士の抗争? ま、好都合だけどね。しっかり掴まってろよ!」 魔導師に攻撃されているフリーデンを尻目に、ガロードはバギーのアクセルを強く踏み込んだ。 そのまま森の中を走っていると、少しだけ開けた場所に出た。 ガロードがクアットロと待ち合わせをした場所である。 既に一台のトラックが止まっており、トラックの前にはクアットロが立っていた。 「流石ですわねぇ、時間ピッタリですわぁ」 「ま、仕事だからね。さっ、ティファ」 バギーから降り、ティファを降ろそうとガロードは手を差し伸べる。 「あ……ああ………」 しかしティファはクアットロを見た途端、怯えるように体を震わせた。 「ティファ?」 「さぁ、ティファ」 クアットロは痺れを切らしたのか、一歩ずつティファに近付いて行く。 彼女の表情は笑顔だが、心の底では怯えるティファを見て楽しんでいた。 「ティファ、早く」 「い、嫌……」 「あなたの居場所はこちらですわよぉ?」 「嫌ああぁぁぁ!!」 「うふふ……」 あからさまに拒絶するティファを見て、クアットロは思わず腹黒い笑みを浮かべた。 それは確かに笑顔だった。 しかし、その顔からは凍てつくような冷たさしか感じない。 アフターウォーで生きてきたガロードが、この『危険な人間のサイン』を見逃す筈がなかった。 「やっぱりこの話無かった事で!」 すぐさまバギーに飛び乗り、全速力でクアットロを横切る。 夜の森と言うこともあってか、ガロード達の乗るバギーはすぐに見えなくなった。 しかし二人を逃がしたというのに、クアットロの顔にはまだ冷たい笑みが貼り付いていた。 「逃がしませんわ」 ぼそりと呟き、二人が逃げていった方向を指差す。 するとクアットロの後ろに止まっていたトラックからカプセル型のメカが飛び出し、飛行しながら二人を追った。 そうとは知らないガロードは早々に森を抜け、視界の利く荒野を走っていた。 雲のせいで月は隠れているが、バギーのライトで充実走行できる明るさだ。 「これでいいんだな、ティファ!?」 ティファは少し頷いただけだったが、ガロードにはそれで充分だった。 「まっ、しゃーねーか! 後はなるように……うわぁっ!!」 突然バギーが大きく揺れた。 バギーがたった今通った所は地面が抉られ、煙が立ち上っている。 追っ手の魔導師が来たのかと思い、ガロードは後ろを振り返った。 だか、煙の中から出てきた物体は、魔導師とは程遠い姿をしていた。 「な、なんだありゃ!?」 二人を追ってきたのはカプセル型のロボットだった。 センサーと思わしき黄色い部分が不気味に光り、そこから魔力弾を連射している。 しかも数は一機だけではなく、更に後ろに二機がついていた。 このロボットは管理局が『ガジェットドローンⅠ型』と呼んでいる個体なのだが、ガロードがそんな事を知る筈もなかった。 「げぇっ! これってかなりヤバイって感じぃ!?」 ガロードはアクセルを再び全開にし、バギーを全速力で走らせた。 それでもガジェットとの距離は全く開くことはなく、攻撃の手が緩むこともなかった。 終わりの見えないデッドヒートを続けているうちに、無数の魔力弾の一発がバギーに迫った。 交わそうとガロードがハンドルを切ろうとする。 その時ティファが思いもよらないことを口にした。 「このまままっすぐ」 「えぇっ!?」 「まっすぐ!」 「んなこと言ったってぇ! うおぁっ!?」 渋るガロードを押しのけ、ティファはハンドルを握り締めた。 ついに魔力弾が頭上にまで迫る。 しかし、魔力弾は軌道から外れ、バギーの左手に着弾した。 「逸れた!?」 確実にこちらに来る弾がティファの言う通り逸れた事に、ガロードは驚きを隠せなかった。 しかし自分達の置かれている状況をすぐ思い出し、ティファからハンドルを取り返す。 疑問を思い過ごしだと整理し、逃げることのみに専念した。 だが、その後も不思議な出来事は続いた。 ティファが右と言えば左に魔力弾が着弾し、左と言えば右に魔力弾は墜ちるのだ。 一度目ならば偶然で片付けられるだろう。 だが二度三度と続けば、それが偶然ではないとガロードにも理解できた。 (すげぇ……。いったいどうなってるんだ? ……そっか! もしかすっと、みんなこの力が狙いで……) そこまでガロードの考えが至った時、バギーの目と鼻の先にガジェットが現れた。 如何にティファの力が強力でも、浮遊するガジェットとバギーの性能差を埋めることは出来なかったのだ。 「うわああぁっ!!」 避けようとハンドルを切るが時既に遅し。 バギーはガジェットに激突し、二人は地面に投げ出された。 幸い二人に大した怪我はなかったが、バギーは大破し使い物にならなくなっていた。 「くっ……ううぅ……」 投げ出された衝撃で痛む体に鞭を打ち、ガロードは立ち上がる。 周りを見回すと、ティファがすぐ近くに倒れていた。 「ティファ!? ティファ!!」 駆け寄って体を揺するが返事はない。 一瞬最悪な場面が脳裏を掠めるが、息は微かにしていた。 どうやら頭を軽くぶつけてしまったらしい。 安堵の表情を浮かべるガロードだったが、三体のガジェットはすぐ後ろにまで迫っていた。 バギーが激突した一体は、ボディが凹んだ程度で未だ機能している。 ガロードはティファを抱えると、近くにあった大岩の後ろに隠れた。 頭が良くないのか、ガジェット達は二人が隠れた岩に何発も魔力弾を放つ。 「畜生っ! あんなのどうやって倒せば……そうだ!」 ガロードはポケットに手を突っ込んだ。 中を漁り、そして目当ての物を掴み出す。 取り出したのは、フリーデンからせしめた銀色のデバイスだった。 「こいつで……って、あ、あれ?」 早速起動させようとデバイスを弄るが、全く反応がない。 「なんだこれ!? 壊れてんのか!? 動けよ! おい!」 デバイスを叩くが、反応する気配すら見られない。 後ろではガジェットの攻撃が激しさを増し、遂に二人を守っていた大岩に亀裂が走った。 「クソっ! 俺はティファを守るんだ!! だから動けよ! この野郎っ!!!」 自棄糞になり、ガロードはデバイスを地面に思い切り叩きつけた。 カツンと音を立て転がるデバイス。 その時、ガロードの願いが神に通じた。 『.....Standby, ready』 「やった!!」 今の衝撃で魔力回路が復活し、機能停止していたデバイスが蘇ったのだ。 奇跡としか言いようがなかった。 これからは神様を信じようと心に誓い、ガロードはデバイスを拾い上げ高らかに叫ぶ。 自分の運命を変えるデバイスの名を。 「ガンダムX! 起動!!」 『Yes, master! GX-9900 GUNDAM X, Drive ignition!』 響くデバイスの起動音。 同時にガロードの周りから青白い光の柱がそびえ立った。 光の柱は空まで伸び、雲を突き破って月を現す。 ガジェットも異変に気がつき光の柱へ近付くいて行く。 だが次の瞬間、柱が弾け、ガジェット達は吹き飛ばされた。 そして柱があった場所、その中心には様変わりしたガロードの姿があった。 体は白を基調としたバリアジャケットに包まれ、カラーリングはかのエースオブエース・高町なのはを連想させる。 背中にはガロードの身長程もある巨大な砲身を背負い、手には青い操縦桿が握られていた。 魔導師ガロード・ラン、ここに誕生である。 『よろしくお願いします、マスター・ガロード』 「ああ! さぁて、今までよくも追い掛け回してくれたな?」 ガロードはGXを握り締め、三体のガジェットを睨み付けた。 対するガジェットはガロードの変身など気にも止めず、三体一気に襲いかかる。 「行くぜぇ!!」 『Slash form』 GXが変形し膨大な魔力が歪な刃を形成する。 ガロードは剣となったGXを構え、ガジェットに向かって駆けた。 それを認めたガジェット達は魔力弾を放ちガロードを牽制する。 しかし元から身軽なガロードは易々と魔力弾の間を縫い、一気に間合いを詰める。 そして一体のガジェットの懐へと入り込んだ。 「でえぇりゃあ!!」 一閃。 ガロード渾身の大振りがガジェットを斬り裂いた。 「もういっちょ!!」 間髪入れずに横にいたガジェットにも一閃をお見舞いする。 形は歪な刃だが、その斬れ味と破壊力は抜群だった。 ガジェット二体は真っ二つに割れ、黒煙を上げて爆発した。 「最後の一体!」 しかし最後のガジェットは形勢不利と踏んだのか、自身の周りにフィールドを張り巡らせた。 アンチマギリンクフィールド。 通称AMFと呼ばれる、魔力結合を強制的に解消する防御魔法だ。 手慣れしていない魔導師が挑むには危険すぎるフィールドであり、GXもすぐにガロードへ警告を発する。 『マスター、AMFです。ここは一旦退いて……』 「なぁ、GX」 『はい』 「歯ぁ食い縛れ!!」 『えっ?』 GXは最初、言われた意味が理解できなかった。 だが、ガロードが自分の警告を完璧に無視し、AMFに突撃して行くのを確認し、何となく理解した。 新しい主人はいきなり無茶をしようとしている。 『マスター!? 一体何を!?』 ガロードは臆することなくAMF内に入った。 GXから伸びていた魔力刃は消え、バリアジャケットの構成も危うくなる。 ガジェットはアンカーケーブルを振り回し、防御が薄くなったガロードに叩き付けた。 しかし、AMF内に入ったからと言ってガロードの素早さが失われる訳ではない。 ガロードは難なくそれを交わし、持ち手だけになったGXを握り…… 「なめんじゃねえ!!!」 ガジェットのセンサー目掛け思い切り殴りつけた。 センサーは粉々に砕け、展開されていたAMFが解除される。 そしてセンサーにGXが食い込んだまま魔力刃が復活。 そのままガジェットの体を貫いた。 「おりゃあああああああ!!」 GXを握り思い切り振り下ろす。 ガジェットはセンサー部から両断され、爆散した。 「はぁ、はぁ、はぁ……や、やったか」 燃え盛るガジェットの残骸を眺めながら、ガロードはその場に膝を突いた。 張り詰めていた緊張感が解けたのか、足から力が抜けてしまったようだ。 危険が去ったのを察知し、GXもGコントローラー型デバイスフォームへと戻る。 『大丈夫ですか、マスター?』 「あ、ああ……それよりティファは?」 膝を地に着いたままガロードは辺りを見回す。 ティファはすぐに見つかった。 先程隠れていた岩陰に立っており、どこか遠くを見つめていた。 「ティファ! 良かった、気が付いたんだな!」 ティファが気がついた嬉しさに疲れを忘れ、ガロードは彼女に駆け寄った。 「………………」 「……ティファ?」 しかし、ティファはガロードが近付いても何も言わず明後日の方向を見つめ続けた。 そんなティファに疑問を覚え、ガロードは彼女に声をかける。 その時、四つの人影がガロード達の目の前に現れた。 「前方に魔力反応! ミッドチルダ式の魔導師です!」 一方、バルチャーを退けたフリーデンはティファの捜索を開始していた。 そんな中ガジェットドローンの反応をキャッチし、ティファの手掛かりになるかと反応を追っていたところだった。 「嘘っ……ガジェット、全機ロスト! 恐らく今の魔導師の仕業だと思われます!」 「……そうか」 トニヤの報告にジャミルは顔を俯けた。 何故なら、立ち上った青白い光の柱に心当たりがあるからだ。 浚われたティファ、持ち去られたガンダムX。 ジャミルは既に答えを出していた。 「月は出ているか?」 「えっ?」 ブリッジにいた全員の視線が一遍にジャミルに集まる。 はやてとリインもジャミルが何を言っているのか検討がつかなかった。 それでもジャミルは聞かずにはいられなかった。 「『月は出ているか?』と聞いている」 ―PREVIEW NEXT EPISODE― ティファを守るため、ガンダムXを起動させたガロードの前に、四人の魔導師と、彼らを狙うバルチャー達が立ち塞がった。 迫り来る無数の流れ魔導師。 ついにティファは、禁断のシステムを作動させた。 第二話 「あなたに、力を…」 戻る 目次へ 次へ